OPAMP道

「音松のオペアンプ道」も始まってはや1ヶ月、大勢の方からアクセスしていただき関係者一同大変感謝している。さて今回2回目はより深く掘り下げてオペアンプの見分け方に集点を合わせてみよう。

1.まずは形から

図1:Dieはシリコンチップ、Mold resinはプラスティックモールド(※WIKIPEDIAより参照)


図2:MUSES

通常よく見かけるものは8ピンのものである。これは"デュアルインラインパッケージ"とよばれており、略してDIP(ディップ)ともよばれる(図1)。左右に4本づつ脚が並んでいるのでそうよばれている。表面はプラスティックモールドされており、中にシリコンチップが入っている。8本の脚、これは"リードフレーム"と呼ばれる金属で、鉄とニッケルの合金で表面を半田メッキしてあるが、中のチップとは"ボンディングワイヤー"とよばれる髪の毛よりも細い金線でひとつづつ結ばれている。

この構造はほとんどのICやLSI、CPU、メモリーなどとも共通である。廃品回収業者が捨てられた電子機器を分解してICを溶かしてこの金線を取り出して集めてまた再生して売るというようなビジネスも昔あったそうだ。

話をリードフレームに戻そう。このリードフレームにも鉄とニッケルの合金ではなく銅を使ったものがある。それはJRC社が最近開発した"MUSES"と呼ばれるオーディオ専用オペアンプで、このMUSESは音質にこだわるために鉄系ではなく銅系の、しかも無酸素銅にしたそうだ(図2)。銅は金属で2番目によく電気を通し、また磁性体ではないので音によいというのがJRC社の主張である。マランツの高級AMPやCDプレーヤもシャーシの内側にも全面に銅メッキがされているので同じ理屈であろう。このようなコストのかかり凝った作りのオペアンプをオーディオの音質追求の為に商品化したJRC社には拍手を送りたい。
さてこのリードフレームには金メッキした物もある。金は腐食しないので信頼性の要求される接点や接触部によく使用される。それはキャンタイプ(CAN)と呼ばれる金属製のカンに入ったオペアンプにそれがあるのだ。キャンタイプは昔のICに多い。昔はプラスティックモールドに問題があって、見た目はしっかりしているが実は隙間だらけで、通電時に温度が上がったりOFF時に下がったりを繰り返すと熱の膨張収縮が繰り返されリードフレームとの接触部分から湿気がはいりやすかったのだ。湿気が入ると中のチップと反応して不良品になる。現在のプラスティックモールドICはすでにこの問題は技術進歩により解決しているので安心していいだろう。
しかしCANタイプは気になる。通称TO-99と呼ばれる。今でも高信頼性を要求される軍事むけ、人工衛星向けなどには需要があり、かなり高価になるが一部の高級オペアンプだけにある。OPA627Aクラスになると今でもキャンタイプの金メッキリードはある。CANタイプの良いところは信頼性だけではない、中のチップがプラスティックモールドなどと密着しておらず圧迫されていないのだ。これは音質などにも影響があるようで、筆者の個人的な試聴比較ではやはり音が伸びのびした感じであった。熱が中にこもらず良く発散するので安定した動作になる。かなり高価だがぜひ試してみたいCAN+金メッキリードである。(図3)

あと忘れてはならないのがスモールアウトラインパッケージである。これは略してSOPと呼ばれる。同じ8PINであるがDIPよりは小型でスペースファクターがよい、また表面実装というプリント基板に穴を開けなくてもよい方法でのはんだ付けができる為、さらにセット全体が小さくできる。
リードフレームもプラスティックモールドの量も少なくて済むのでエコである、が値段は安くない。携帯電話、ポータブルMP3プレーヤ、ノートパソコンは全部のICがSOPタイプだ。SOPの電気的な面での良いところは中のチップと外の配線がとても短くできる、またリードフレームも短い。これは配線のインダクタンス成分、いわゆるコイルのL成分が少なくなって、高い周波数での動作が安定するのだ。たった数ミリでも? そうなのだ、高性能オペアンプはたった数ミリの配線長にも影響されるのでSOPでないとその性能が発揮できないオペアンプもある。SOPよりもさらに小さいSSOP(スモールスモールアウトラインパッケージ)もある(図4)。

DIPもSOPもSSOPもCANも同じ型番であれば、中のシリコンチップはみな同じものを使っている。しかしパッケージが違うと性能も変わってきて、さらに出荷テスト方法も変わってきて、値段も違うものとなる。

オペアンプ交換のとき、DIPをCANに変えるのは興味深い。PINの並びが同じであるのでそのまま差し替えができる。それはそうだ、中のシリコンチップが同じなのだから。しかし注意が必要だ、それは1PINのマークが違うのだ。図5を見てほしい。

図3:CAN タイプ+金メッキリード


図4:一番奥が普通のDIP、真ん中がSOP、
手前がさらに小さいSSOP

図5:タブが出ている、これが8PINを表す。1PINではないので注意。PINの並びはDIPやSOPと同じで反時計回りに1,2,3,4…..8となる。TOP VIEWとは上から見たという意味である

2.変換基板を使ってみよう

DIPをSOPに変えるのは、変換基板に載せるとよい。このような基板は秋葉原で売っているので自分で作ることができる。図6を参照してやってみてほしい。

図6:SOPをDIPに変換する基板、ソケットは別売りである。



第一回で紹介したように、同じ8PINでも1回路入りと2回路入りがある。1回路入りは変換基板の2つ載せて2回路入りとすることができる。図7を参考にしてほしい。

図7(←):1回路入りを2回路入りに変換する2階建て基板 / 図8(→):SOP版は裏表につく。



さてこれらをまとめると下記のような型番になる。パッケージの違いは最後のサフィックスと呼ばれる記号であらわされる。なおこのサフィックスはメーカーごとに異なるのでデーターシートを見て良く区別してほしい(図9)。

図9:バーブラウンデータシートより抜粋

3.型番のルール

図10:各社型番について

オペアンプには様々な型番があるが何かルールがあるのだろうか?
まずはメーカー特有の番号がある、それは最初のアルファベットであらわされる。
TLはテキサスインスツルメンツ、OPAはバーブラウン、今はテキサスインスツルメンツに買収されて傘下に入ったが型番は残っている。ADはアナログデバイス、LTはリニアテクノロジー、LMはナショナルセミコンダクタなどである。左記の一覧表を見てほしい。なお今は日本のメーカーはJRCだけとなったが、製造中止となったメーカーの昔のオペアンプもよく見かけるのでできる限り多くまとめてみた。
各社吸収合併を繰り返した結果、今や無くなったメーカーも多数ある。(図10)

現在、存在する主要オペアンプメーカーは左記の6社に絞られた。
NEC、東芝、日立などの日本勢はデジタルのシステムLSIに特化したのでもうアナログのICはあまり投資しなくなったのだ。

さて、そのつぎは数字の番号であるが、これには法則性は少しだけあるが、基本は覚えるしかないだろう。
オーディオに絞って言うとまずは、元祖RC4558。RCはレイセオン社、4558は特に意味はない。このRC54558は20年以上も前の製品だがオーディオの用途では一大ベストセラーになったので、各社これをまねてコンパティビリティのあるオペアンプを出した。NECはuPC4558、JRCはJRC4558、ソニーはCXA4558という具合だ。これを改良してJRCはNJM4560などを出している。アメリカのメーカーは他社のコ

図11:回路数と型番


図12:OPA134シリーズは4回路品もある、
パッケージが14PIPNになる

ンパチ品を出しても型番は変えずにもとのメーカーの型番のまま出す場合が多いが、日本のメーカーはなぜか頭を自分のものに変えている。
NE5532はそのつぎの本家ともいうべき製品で、これのコンパチ品はXXX5532という番号で各社が出した。5532は2回路入りなので、その1回路入りはNE5534となっている。最後の数字が2回路が2で1回路が4? ちょっとややこしいがこれは覚えるしかない。OPA2604は2回路、その1回路版はOPA604、つまり最初の2は回路数を表しているのだ。同じことはOPA2134、OPA134にも言える。テキサスインスツルメンツ社のベストセラーのローノイズ版TL072は覚えやすい。1回路入りはTL071、2回路はTL072、4回路はTL074だ。その一般品はTL081、TL082、TL084となっておりわかりやすい。それ以外にOPA627Aの選別品はOPA627B、さらにハイスピード版はOPA637Aとなっている。またプロセスを変更した姉妹品はOPA827と、型番に連続性を持たせている。だいたい後ろにAが付いているとなにがしかの選別か改良をしたものが多い。Bになるとさらにその上の選別品である。その内容はメーカーのデータシートを良く読むしかない(図11)(図12)(図13)。

図13:各回路入りのPIN配列。これは各社共通である。(1回路のOffset Trimだけは違うので注意)

 
米国テキサス州の半導体会社にて長年デジタルAVのLSIの企画開発やマーケティングを担当。はじめて使ったオペアンプはRC4558で、学生時代のエレキギターエフェクターは自作だった。アナログからデジタルまでの幅広い知識と経験を生かし、現在は各種オーディオコンサルティングやアンプの設計製作に専念。ハンドメイドオーディオ工房"オーロラサウンド"所属。趣味はギター演奏。
OPA2604APを使っていますが、かなり熱くなり心配です。OPA627はさらに熱いと聞きますが大丈夫でしょうか?
 
OPA2604APの場合は45℃、OPA627APは46℃。特に問題になる温度ではありません。

実際に温度を測ってみました。iTUNEで音楽を30分鳴らし、デジタル温度計で測定しています。

次はOPA627AP×2個に変えてみました。

温度は消費電力に比例します。 データシートを見ますとOPA2604の消費電流は最大で12mA。OPA627Aは最大で7.5mA。OPA627Aの場合は2個必要になりますので15mAになります。

よってOPA627A×2個のほうがOPA2604A×1個よりも1.25倍消費電力が大きくなり、温度も高くなります。しかし実際は温度は2個に分散され下がりますので、実験結果のように46℃となります。
なお、OPA627APでもOPA627BPでも消費電力や温度は同じです。

コンデンサ類は85℃付近まで大丈夫ですので、御心配は無用でしょう。