OPAMP道

前回に続きAUDIOTRAKのDR.DAC3のOPAMPをいじりまくって、更なるグレードアップに挑んでみたいと思う。
今回はDACの後の2つのOPAMPを交換してみたい。

オリジナルは新日本無線の「MUSES8290」であるが、これを「LME49990」に交換してみた。

「MUSES8920」は2回路入りで、「LME49990」は1回路入りなので、前回同様に「LME49990」は2つ裏表に搭載した変換基板タイプを使っている。なお、IV変換部はオリジナルの「NE5532」に戻してテストしている。
この2箇所は完全にアナログ信号に変換された後の部分で、最終的な音キメに影響の大きいところである。前回のIV変換部に比べて電気的なスペック重視というよりは、サウンドの感覚重視のところである。オリジナル版は音が良いことで定評のある新日本無線「MUESES8920」であるが、前回同様スペックが優れている「LME49990」を試し、音の変化についてレポートしてみたいと思う。
まずオリジナルの「MUSES8920」の音の印象は、音が暖色系で音楽のいいところを描き出していると思った。それに対し「LME49990」は明瞭、くっきり鮮やかで、ハツラツとしたイメージである。
写真のリバーサルフィルムにたとえてみると、「MUSES8920」はコダクローム系、「LME49990」は富士のベルビアのようである。 今やアナログ写真はほとんど廃れてしまって残念であるが、この2つは対象的な色合いで黄色いパッケージのコダクロームはかなり昔に開発されたが、こってりした暖かい色合いは一時代を築いた。それに対し富士のベルビアは新しいFILMで特に赤黄青の原色が目見まぶしいほど鮮やかであった。この2つの色合いはgoogleで画像検索してみるとわかりやすい。これほどの対照性はないが、あえてたとえてみたのでお許しいただきたい。
「MUSES8920」の古風で味のある音に対して「LME49990」のほうが現代的で若々しい音であると感じた。「LME49990」はシンバル、パーカッション、アコースティックギターの分離がよく、解像度が高い。「MUSES8920」はそれらをまとめていい雰囲気を出しているという印象である。
「MUSES8920」は入力がFET素子、「LME49990」はバイポーラトランジスタである、この違いはまた今度解説したいが、オーディオアプリケーションという限られた信号レベル、周波数範囲、ソースインピーダンスにおいてはこのアンプでは特にどちらでも使えるので、音の好みだけで選んでも問題ない。
※音質評価は個人的主観によるもので絶対的なものではありません。「MUSES8920」は1個500円前後、「LME49990x2」は3500円前後(秋葉原調べ)
話は変わって、OPAMPの応用例を見てみよう。スタジオの録音機材はOPAMPの塊である。ここにYAMAHAのアナログミキサーのボードがあるので中を見てみよう。TIの「NE5532」と新日本無線の「NJM2014」だらけである。1チャンネルだけで約20個も使うので32CHで640個、よってこれは音に定評があって安心して使え、かつ価格が安いものを採用するしかないだろう。
堅い話はこれくらいにして、前回に引き続きヘッドフォン評価に最適な音源を紹介しよう。
スティービーレイボーンは、アメリカテキサス州出身のブルースギタリストで、おしくもヘリコプター事故で他界したが、白人ブルースギターの頂点を極めた。YouTubeでも当時の熱演が多く見ることができる。その中でもジミーヘンドリックスの"リトルウィング"をカバーした音源を紹介したい。ナチュラルトーンに近いストラトキャスター特有のメリハリのある筋の通ったサウンドで始まるイントロにもう一発で引き込まれ、軽快なドラムのフィルインでギターソロが展開する。ピッキングの強弱できれいにアンプのオーバードライブひずみが変化するのが見て取れるようだ。彼は太い弦を張って半音下げてチューニングしているそうだが、そのブルージーな感じが大変心地よい。これをヘッドフォンで聴くと、あっちの世界にトリップしてしまうような感覚になるだろう。オリジナル盤のライナーノートにもヘッドフォン試聴を進める記述があるのも面白い。
 
米国テキサス州の半導体会社にて長年デジタルAVのLSIの企画開発やマーケティングを担当。はじめて使ったオペアンプはRC4558で、学生時代のエレキギターエフェクターは自作だった。アナログからデジタルまでの幅広い知識と経験を生かし、現在は各種オーディオコンサルティングやアンプの設計製作に専念。ハンドメイドオーディオ工房"オーロラサウンド"所属。趣味はギター演奏。